ブロックチェーンの活用の可能性の一つとして考えられているのが「物流」への適用です。
物流に適用する場合どのような可能性があるのでしょうか。今回は物流xブロックチェーンの可能性について検討・模索してみました。
物流(Logistics)は、サプライチェーンのマネジメントであり、商品のフローのマネージングでもあります。顧客の求めるオーダーに答え情報をインテグレーションし、最適な経路設計と実行を行うものです。古代の戦争における兵站なども物流であり、歴史が深いジャンルです。最適化のためのアプローチは多岐にわたり、AIやロボティクスとの相性も抜群と見られており、様々なプロダクトとの掛け合わせが実行・検討されています。さてそんな物流とブロックチェーンの掛け算ではどのような可能性があり、どのような課題があるのでしょうか。
ブロックチェーンとの掛け合わせの可能性
トレーサビリティ
・誰が
・いつ
・どこで
商品についての情報詳細を、確実にトレースしたい場面というのがあります。具体的にはブランド物や食品の原生産地から顧客の手に届くまでをトレースすることで、例えばブランドの偽物や怪しい食品が混入することを弾くことができます。ブロックチェーンは改ざん不能な台帳なので、記録を残すには適しており、物流分野でもとりわけこのジャンルは相性が抜群と考えられています。VeChain(VEN)もそのようなコインの一つで「真贋判定」とよく例えられますが、厳密には「商品のトレースが可能なプラットフォーム」です。NFCチップを商品の流通に埋め込むことで、確実に通った場所をVeChain上に記載していきます。これらは低単価の商品ではコストが見合わないと考えられますが、商品が本物であるという価値があるブランド物などには抜群の相性だと考えられます。石油の流れなどにもVeChainは使われており、エネルギー分野への応用も行われております。
国をまたいだ情報管理
世界的な展開を行うブランドや商品は、流通が国をまたいだり、業者が各国に存在するため管理のコストが高い場合があります。これらの問題は物流でも見受けられ、業者により管理方法がまちまち、記録方法も様々になる場合があります。これらを統合したブロックチェーンによる台帳導入はアナログの世界を一変させる可能性があります。
契約=コントラクトのスマートコントラクト化
各物流には保険や証券、請求などの契約が紐付いています。これらを書類やメールでやりとりして各業者が厳密に契約をかわすのですが、スマートコントラクトのようなアプローチで自動化することでコストを大幅に下げられる可能性があります。条件からの行為や分配はスマートコントラクトのエリアになるので、プラットフォームとして導入した際に大きなメリットを享受できる可能性があります。例えば、Aという地点まで商品が届いた時点で支払いを自動で行ったり、契約ごとにお金の移動をスピーディに行うことができます。1商品ごとに決済を行う(自動で)ということも可能になる可能性があります。
物流プラットフォームとしてのブロックチェーン
これらの話のほとんどは、いずれもシステムとして包括的なプラットフォームとして採用することで様々なメリットが享受できるというのがポイントと考えています。 ビジネスに必要なエビデンス(たとえばコンテナの商品の場所、温度、日付)を一括で管理可能で改ざん不可能ということを物流参加者全員が確認可能な状態では、商品が消えるというようなことも防ぎやすいですし、一つ前の状態までは追いかけるのが容易なため原因の特定も可能になりやすいです。ですが、今までのようにプライベートなデータではなく、それらは分散されてパブリックデータとなる部分が多くなるため、大きな企業にとってはリスクを図るのが難しいかもしれません。特に物流業界はそれらのパブリックな文化にたいして距離感がある可能性は高いかなと思います。
物流xブロックチェーンの課題は
1.プラットフォームとして数十社が参加するような構造
2.データのアクセス、管理の方法
の二点が大きいと思います。1についてはそれらを各社が承知して導入するコストとプロセスの難易度がとても高く、2については上で説明したようにリスクと、それにあったリターンを参加者が感じられるかが意思決定の課題です。
トレーサビリティのアプローチだけであればミニマムにも始められる可能性があるので、これに尽きるわけではありません。ですが、構造転換とみられる規模での変化が起きるには上記の課題がメインの課題になるかなと思っています。これから数年かけて転換がきそうな物流業界のなかでブロックチェーンがどのようにインテグレートされるのか楽しみに見ています。