HOME ブロックチェーン技術 ブロックチェーンはデジタルコンテンツの権利を守れるのか?

ブロックチェーンはデジタルコンテンツの権利を守れるのか?

このエントリーをはてなブックマークに追加

現代はデジタルの時代。音楽や映像、書籍といった、ありとあらゆるコンテンツがインターネットを介してデータでやり取りされています。そこには、プロやアマチュアといった垣根はありません。誰もがインターネットさえあれば自由にデジタルコンテンツを発信できる時代になりました。

しかし、そのような時代にはデメリットも存在しています。それが権利に関する問題。デジタルな社会では自由であるあまり「誰がいつコンテンツを制作し、著作者としての権利を持っているのか」を把握するのが難しいのです。

長年にわたり議論がかわされてきた、このデジタルコンテンツの権利問題。最近になってブロックチェーン技術に活路が見出されてきています。この記事では、デジタルコンテンツの権利問題を解決するブロックチェーン技術にフォーカスし、特徴や今後の可能性、課題についてお話します。

ソニーが開発したデジタルコンテンツの権利情報処理システム

ソニーが開発した権利情報処理システム

2018年10月、ソニーグループの3社(ソニー株式会社、株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント、株式会社ソニー・グローバルエデュケーション)が連名で、ブロックチェーン基盤を応用したデジタルコンテンツの権利情報処理システムを開発したことを発表しました。これは、教育データの認証や共有、権限管理に使われていたシステムをベースに、対象範囲をデジタルコンテンツ全般へと拡大したもの。ブロックチェーンの特徴である情報改ざんへの強度を活用し、デジタルコンテンツの権利保護ができる仕組みです。

このシステムには、事実情報を改ざん困難な形で記録する機能、デジタルデータの作成日時を証明する機能、過去の登録済みコンテンツから情報を参照する機能などを実装。これまで証明が困難だったデジタルコンテンツの権利問題解決に一石を投じる発表となりました。

ソニーによるリリース

冒頭でも記載したとおり、現代では、ありとあらゆるものがデジタルコンテンツとして発信されています。それらすべての権利保護にこのシステムが応用可能であるとソニーは話しており、幅広い分野での活用が期待されています。

権利管理の従来型システムとブロックチェーンを使ったシステムの違い

「仮想通貨の技術」とステレオタイプに捉えられがちなブロックチェーン技術。もちろん仮想通貨に広く採用される技術であるのは間違いありませんが、実は仮想通貨の分野とは独立した先進技術です。

その概要は、情報を公開し、さまざまな場所に保存することで、関与する全員で管理していこうとするもの。仮にどこかに保存されたひとつのデータが改ざんされたとしても、ほかの場所にある複数のデータと照合が取れないため、結果として改ざんが困難となる仕組みです。

ブロックチェーン技術は、デジタルコンテンツの権利問題をほんとうに解決できるのでしょうか?ブロックチェーンの特徴を踏まえ、この点について掘り下げます。

避けては通れないJASRACとの比較

JASRACとの違い

従来型の権利情報管理システムといえば、JASRACの存在があまりにも有名。彼らは彼らでしっかりと著作権を守ってきた面がありますが、近年になって問題点も指摘されるようになりました。(詳しくは次項に記述)
JASRACという従来型のシステムと、ブロックチェーンの権利情報管理にはどのような違いがあるのでしょう。

もっとも大きな違いは、中央管理者が必要かどうかです。
従来型のシステムでは管理母体となる組織がどうしても必要となります。データを登録するにも照合するにも、管理母体のだれかが作業しないことには進みません。しかし、ブロックチェーンを活用すれば、その必要はなくなります。なぜなら、ブロックチェーンは情報に関与する全員で管理する仕組みであるから。マイニングの仕組みも活用できれば、ほぼノーコストで永続的に管理が可能です。つまり、これまで管理母体に発生していた莫大なコストが、ブロックチェーンでは限りなくコンパクトにできるのです。

ブロックチェーンによる権利情報管理システムの可能性

JASRACによる管理では、

  • 権利範囲の解釈がJASRACの裁量
  • 権利者に誤った請求が発生する
  • 徴収された金額の分配が不透明

といった問題点も囁かれます。これらはブロックチェーンを活用した権利情報管理システムが実用化され、権利者がだれかに頼ることなく著作権を管理できれば、すべてクリアになる問題でしょう。これこそがブロックチェーンによる権利情報管理システムの可能性だと言えます。

既存の仕組みでは、権利者の手が届かない、目の及ばないところで、著作権が語られている実情があります。権利者が当事者として権利情報を管理できる仕組みを作るために、ブロックチェーンにかかる期待は小さくありません。

また、既存のシステムは、デジタルの時代に対応できているとは言い難いものです。仮に2つのシステムが共存する形であったとしても、デジタルコンテンツ隆盛の時代には価値のあるものと考えることができそうです。

ブロックチェーンによる権利情報管理システムの課題

新しい権利管理システムの課題

いまもっとも実用化に近い仕組みに、ソニーが開発した先の事例も挙げられます。しかし、これは利益を目的とした一企業によって開発されたもの。最終的には利益ベースで運用されることも容易に予想できます。この場合、システムを使うために権利者がコストを支払わなければならない可能性も出てくるでしょう。

仮想通貨におけるブロックチェーンの活用では、通貨保有者の送金手数料がシステムの運用に充てられています。この仮想通貨の仕組みのように、納得がいく額で運用が可能なのか。利益ベースで作られているであろうシステムだけに、ここに課題を感じずにはいられません。

また、権利情報管理システムは、社会的に一般化されればされるほど機能する面を持っています。JASRACの仕組みが問題視されながらも、なかなか大勢が変わらない実情には、この面によるところも大きいでしょう。この点はデジタルコンテンツであってもおなじことが言えます。

「こちらのシステムには情報が登録されているけど、あちらには登録されていない。」このような状況では、権利を守るシステムとして機能しているとは言えません。おなじ権利情報をいくつもある管理システムにそれぞれ登録していく作業は現実的ではないでしょう。つまり、「デジタルコンテンツの著作権はここに登録しておけば大丈夫」という状況になるまでは、継続的に課題があり続けることになります。

これらの点を解決できて初めて、新しい時代の権利情報管理システムと呼ぶことができるのではないでしょうか。ブロックチェーンが有用である一方で、まだまだ課題も散見されるこの分野。引き続き、動向を注視していきましょう。

この記事の著者
結木千尋
ユウキチヒロ。名古屋在住のフリーライター・インタビュアー。 3度の飯よりサブカルチャー(音楽・映画など)が好き。 ここに書ききれないほどの趣味とこだわりがあります。 詳しくはこちらから↓
このエントリーをはてなブックマークに追加

IBMがコンソーシアム型ブロックチェーンで仕掛ける4つの分野とは?

前の記事

商業化したIBM Food Trust ブロックチェーンで食の信頼はどう変わるか

次の記事

RELATED

関連記事