HOME ブロックチェーン技術 転機むかえる2年目のカルダノ ビジネス面を牽引する『EMURGO(エマーゴ)』のキーマンにインタビュー

転機むかえる2年目のカルダノ ビジネス面を牽引する『EMURGO(エマーゴ)』のキーマンにインタビュー

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2017年9月のローンチから1周年を迎えたCardano ADA(カルダノエイダ)プロジェクト。この1年でカルダノプロジェクトは瞬く間に拡大し、仮想通貨時価総額トップ10入りの常連コインとなった。

主要アルトコインとして君臨する一方で、仮想通貨ユーザーの注目はその巨大な時価総額や、元イーサリアム共同創設者であるチャールズ・ホスキンソン氏が技術面のトップを務める事など、華やかな側面にスポットライトが当たりがちだ。

今回、カルダノプロジェクトでビジネス面を管轄する組織『EMURGO(エマーゴ)』で取締役を務める吉田氏と広報責任者の三本氏に話を聞いた。

そもそもカルダノとはどのようなプロジェクトなのか、そしてこれからのカルダノプロジェクトが目指す未来はどのようなものか、キーマンである2人が全ての仮想通貨ユーザーに届く言葉で、丁寧に語ってくれた。

取締役の吉田氏(写真右)と広報責任者の三本氏(左)

カルダノプロジェクトの目標とユニークな組織体制

発展途上国の経済活動にフォーカスしたプロジェクト

ーー初歩的な質問ですが、カルダノプロジェクトが解決したい課題とはどのようなものですか?

三本:アフリカの30億人の銀行口座を持たない人々に、その代わりとなるようなサービスを提供していくことです。

価値の保存や土地の所有権の証明ができないことにより、経済活動に参加できていなかった人たちのハンデをなくしていくことが我々のプロジェクトの一つの目標となっています。アフリカを中心とした、発展途上国にフォーカスして動いています。

 

ブロックチェーン開発を担うInput Output(IOHK)

ーーカルダノプロジェクトはInput Output(IOHK)、EMURGO、カルダノ財団、この3つの団体が推進していますが、それぞれどのようにミッションが分担されていますか?

吉田:まずはIOHKから説明します。IOHKはイーサリアムの共同創業者でもあるチャールズ・ホスキンソンがCEOを務めていて、従業員が160名ほどの組織です。このIOHKがカルダノのブロックチェーンを開発しています

カルダノブロックチェーンは5つの段階でアップデートしていくのですが、それぞれ『Byron/バイロン』『Shelley/シェリー』『Goguen/ゴーグエン』『Basho/芭蕉』『Voltaire/ボルテール』と呼んでいます。いずれも詩人や哲学者など歴史上の偉人から名前を取っています。現在の進捗は2段階目のシェリーとなっています。

 

多岐に渡るEMURGOの事業開発

ーーなるほど、次にお二人が所属しているEMURGOについて教えてください。カルダノプロジェクトにおけるビジネス面を担っていると思いますが、具体的なミッションはどのようなものですか?

吉田:EMURGOの会社としてのミッションは「カルダノブロックチェーンですべての人が便利で公平につながる世界を創る」ことです。このミッションを達成するためにカルダノエコシステムを構築していくのですが、EMURGOはビジネスの面から貢献していきます。

カルダノのブロックチェーンに乗っかるアプリケーション(Dapps)や、システムの開発等で、先日リリースした『YOROI Wallet(ヨロイウォレット)』はその一例です。

また、カルダノのエコシステムに貢献する事業への投資もしています。他にも東京理科大学などの研究機関との提携、ICOのコンサル事業も展開しています。あとは対外的なアライアンスの構築も進めています。具体的な例を挙げると、韓国のメタップスプラスと組んでモバイル決済の取り組みを進めています。あとはADAの取引所への上場も主にEMURGOが担当しています。現在30ほどの取引所での取り扱いがあり、世界の大手取引所はほとんど上場し終わっています。

ーーEMURGOにも開発組織があるんですね。開発におけるIOHKとEMURGOの住み分けはどうなっているのでしょうか。

吉田:IOHKではカルダノのブロックチェーンの研究・開発がメインとなっており、EMURGOではそのブロックチェーンに乗るDappsの開発やヨロイウォレット開発などを含む、ビジネス面全般を請け負っています。

三本:ちなみにヨロイという名前は、日本の「鎧」から来ていて、時価総額TOP10の仮想通貨会社の中で、唯一日本に本社拠点のあるカルダノ/EMURGOとしての矜持をブランドに込めて命名しました。

EMURGO広報責任者の三本氏

12万5000人のコミュニティを抱えるカルダノ財団

ーーなるほど。ではカルダノ財団はどのような組織で、どのようなミッションを担っていますか。

吉田:一般から見るとわかりにくく映るかもしれませんが、カルダノ財団は規制への対応やコミュニティの育成を担っています。仮想通貨業界に詳しくないと「コミュニティ」と言われてもしっくりこないかもしれませんね。簡単に言うとコミュニティはファンの集まりで、プロジェクトの成功に大きく関わる要素です。現在、カルダノのコミュニティはだいたい12万5000人くらいの参加者がいます。

三本:公式Twitterアカウント@Cardanoのフォロワーが12万5000人くらいいます。Facebookに2万人、Telegramに6万人のフォロワーがいるので、ユーザーの重複を差し引いても少なくとも12万5000人はコミュニティ参加者がいるととらえています。

 

EMURGOのこれまでの1年

ーーコミュニティも順調に成長しているようですね。先日、Cardano ADAがローンチ1周年を迎えましたが、どのような1年になりましたか?

吉田:繰り返しにはなりますが、まずはブロックチェーン開発の第2段階のシェリーが順調に進みました。EMURGOとしてはヨロイウォレットのリリース、Traxia(トラクシア)社への投資、東京理科大学との提携、メタップスとのアライアンス、30ほどの取引所上場、といったトピックがありました。

三本:あとは今年の初めに、アクセラレーションプログラムが発足しました。チャイナアクセラレーター、MOX(モックス)といったところと提携したり、あとはブロックチェーンスマートフォン『FINNY(フィニー)』を開発するのSIRIN LABS(シリンラブス)と仮想通貨ADAのインテグレーションの話を進めています。

ーービジネス面といっても多方面に取り組まれていますね。新たに取り組みに着手する基準などあるんでしょうか。

吉田:大きな軸としては、やはりカルダノエコシステムに貢献するか、しないかが判断基準になります。収益性が高い取り組みでも、カルダノエコシステムへの貢献度が低いのであれば優先度は下がります。

三本:あとはブロックチェーン業界の人材育成への貢献も判断基準です。我々も苦労しているのですが、ブロックチェーン人材は集めるのが難しいです。そういう意味では人材を育てるのもミッションだと思っていて、アクセラレーションプログラムとの関わりで東京理科大学と提携したり、ブロックチェーンスタートアップのシーズ期に投資をさせていただいたりして、ゆくゆくはEMURGOのDapps開発の人材確保にも貢献できたらいいと考えています。

 

プロジェクト成功のための3つの課題と解決策

他のブロックチェーンと共存可能で実用に耐えうるシステムを目指す

ーーカルダノプロジェクトが成功するために、どのような課題を感じていますか。そしてそれらの課題を解決するためにはどのようなアクションが必要でしょう。

吉田:解決すべき課題は3つあります。「拡張性/スケーラビリティ」「相互運用性/インターオペラビリティ」「持続可能性/サステイナビリティ」です。これらについてはイベントに登壇する機会などでも発信してはいますが、どうしても技術的な話になりがちなので、できるだけわかりやすく説明します。

EMURGO取締役の吉田氏

三本:まず、なぜこの3点をクリアすることが必要か説明させてください。現時点で、ビットコインやイーサリアムなどのブロックチェーンにおいて、実用に耐えられない部分が見えつつあります。じゃあ、私たちがカルダノ以外のブロックチェーンを淘汰していくのかというと、そうではありません。カルダノが実用に耐えうるブロックチェーンを作り上げたうえで、他のブロックチェーンとも共存できる仕組みを考えながら開発をしてます。その世界を実現するためには拡張性、相互運用性、持続可能性の課題を解決するべきだと判断しました。

 

【拡張性】TPS、ネットワーク回線容量、ブロックサイズの問題をクリアに

吉田:最初に拡張性についてですが、拡張性の問題は3つに分けられます。ひとつはTPS(Transaction Per Second)、つまり1秒間に何回の取引ができるかの問題。2つめはネットワーク回線容量の問題。3つめがブロックサイズの問題です。これら問題を解決するためにカルダノではブロックチェーンを複数のレイヤーに分けて、複数のブロックチェーンを内包するような形にしています

 

複数のブロックチェーンで役割を分けることでネットワーク混雑を回避

吉田:まず、ネットワーク回線容量についてお話します。ブロックチェーンを複数分けていると話しましたが、メインのレイヤーが『セトルメントレイヤー』と呼ばれるもので、これはADAの決済をするためのものです。それとは別のブロックチェーン、サイドチェーンとも言いますが、これは『コンピューテーションレイヤー』というところにあるんですけれども、そこはスマートコントラクトを走らせるためのレイヤーです。決済用とスマートコントラスト用にブロックチェーンを分けているのがユニークな点です。何もかも同じブロックチェーンに乗せないことで混雑を回避します。

複数のブロックチェーンがあることでシステムが重くなってしまうのでは?とイメージするかもしれませんが、PoS(Proof of Stake)というコンセンサスアルゴリズム、言い換えると合意形成の仕組みを採用していることでその問題を解消できています。このカルダノのPoSには「ウロボロス」という名前がついています。

ーーカルダノのPoSとPoWとの違いはなんでしょうか?

吉田:PoWはビットコインで採用されているブロックチェーン生成の仕組みですが、参加者同士で計算力を競争させるため、かなりのコンピューテーションパワーを使います。一方、カルダノブロックチェーンのPoS、ウロボロスでは、選ばれた人(スロットリーダー)が計算すればいいだけなので、コンピューターの容量をそこまで食わず処理が重くならない。なので、サイドチェーンなど複数のチェーンが走っていても処理速度を維持できる状態になっています。

 

ネットワーク回線容量をクリアする『RINAプロトコル』

吉田:次にネットワーク回線容量の課題です。少し技術的な話になってしまいますが、簡潔に説明しますと『RINAプロトコル』というネットワークプロトコルを導入することで問題を解決しようとしてます。

ネットワークプロトコルは通信ルールのようなもので代表的なものではTCP/IPなどがありますが、カルダノではRINAプロトコルを採用することでネットワークの混雑を回避しようとしている、と理解しておいていただければいいです。

 

ブロックサイズの課題を解決するカルダノ

吉田:拡張性をクリアする最後の課題がブロックサイズです。ビットコインの場合、マイナーが過去のブロックを全てダウンロードしないとマイニングできないので、年月の経過に伴ってデータが重くなってしまう問題があります。カルダノの場合、簡単に言うと一部分のデータを持つだけでブロックの生成が可能になります。PoS参加者みんなでブロックのデータを持つことでそこまで重くならない、という仕組みです。

 

【相互運用性】カルダノ以外のシステムと共存するためのサイドチェーン

ーー相互運用性とはどんな課題なのでしょうか。

吉田:これはなんのことを言っているかというと、ひとつはビットコインやイーサリアムといった、カルダノとは別のブロックチェーンとの相互運用性を指しています。もうひとつは既存のシステム、例えば銀行などのシステムとの相互運用性です。

カルダノではこれをサイドチェーンを使って解決しようと思っています。このチェーンを開発者の頭文字をとって『KMZサイドチェーン』と呼んでいます。これを用いて、最初の段階としてセトルメントレイヤーとコンピューテーションレイヤーの価値移転を可能にしています。それ以外の仮想通貨・ブロックチェーンとの相互運用性については、カルダノロードマップでいう2段階目の『シェリー』で順次開発を進めていきます。

 

【持続可能性】半永久的に持続する非中央集権モデル

ーー持続可能性はどの仮想通貨プロジェクトでも重要ですよね。カルダノプロジェクトではこの課題にどのように向き合っていますか?

吉田:まず、前提として知っていただきたいのが、IOHKがカルダノブロックチェーンの開発をするのは2020年までの予定ということです。IOHKが開発をしている間はいわゆる中央集権的な開発体制ですが、2020年以降はIOHKの手を離れて非中央集権的な開発体制に移行します。ですから、IOHKの手を離れても半永久的にカルダノというブロックチェーンの開発が回っていくサイクルが必要なのです。

そのサイクルを構築するため、カルダノでは『トレジャリーモデル』を作ろうとしています。これは何かというと、カルダノのトランザクション手数料の一部を将来の開発のために別のウォレットに積み立てておく仕組みです。これによって、開発者はコミュニティに対して改善案と開発費を提案し、承諾されれば開発費をトレジャリーモデルのウォレットから拠出することができます。これによって開発面の持続可能性を担保します。

三本:開発以外で言うと、コミュニティによる議決権を他人に譲渡できる仕組みも持続可能性のために用意しています。例えば、コミュニティでKMZサイドチェーンのアップデートについて決議するとします。私はKMZサイドチェーンについて判断できませんから、コミュニティ内の研究者等、ブロックチェーンに詳しい人に議決権を譲渡することができます。

 

スマートコントラクトを支えるシステム『IELE(イエラ)』

ーーカルダノのスマートコントラクトの特徴について教えてください。イーサリアムのスマートコントラクトとの違いはどのあたりでしょうか。

吉田:カルダノでスマートコントラクトを記述するには『IELE(イエラ)』というバーチャルマシンを利用します。要するにスマートコントラクトを書くためのシステムですね。

イーサリアムの場合、Solidityというプログラミング言語でスマートコントラクトを書くのですが、この言語はイーサリアムのスマートコントラクト専用です。一方、IELEは『Kフレームワーク』という技術によって、様々なプログラミング言語でスマートコントラクトを書けます。具体的にはC言語、Java、JavaScript、Plutusなど、もちろんSolidityも含まれています。

これの何が良いかというと、プログラマは自分の得意なプログラミング言語でスマートコントラクトを記述できるようになります。当然、SolidityもIELEで動作しますので、すでにイーサリアムで開発されているスマートコントラクトの移行も簡単にできます。

 

カルダノロードマップの注目ポイント

ーーカルダノプロジェクトの詳細なロードマップは公式サイトで公開されていますが、一般の仮想通貨ユーザーは主にどのあたりに注目していればいいでしょうか。

吉田:冒頭に申し上げたように、ロードマップの大枠として5つの段階を想定しています。すでに完了している最初の段階『バイロン』ではセトルメントレイヤーの初期バージョンを完成させ、決済ができるようになりました。

現在は2段階目の『シェリー』の開発を進めていますが、これが完了すると、非中央集権的なサイクルが出来上がります。開発がIOHKの手から離れる2020年以降も持続可能な開発体制が出来上がります

3段階目の『ゴーグエン』ではIELEが実装されます。あらゆる言語でスマートコントラクトが記述できるようになります。

4段階目の『芭蕉』はパフォーマンスの上昇、セキュリティや拡張性の強化を目指します。

尚、4段階目『芭蕉』と5段階目『ボルテール』に関してはまだ公表されていない情報もあり、プロジェクトの状況を見ながら詳細を開示していくことになります。

1〜5段階のアップデートは、基本的にIOHKが開発を担当する2020年までに完了する予定です

ーーカルダノの2年目はどのような年になりますか。一般的な仮装通貨ユーザーの目線での大きな動きはありますか。

吉田:ここまで技術的な話が多かったので、一般の仮想通貨ファンにもわかりやすいところで言うと、スマートコントラクトが実装されることで、カルダノブロックチェーン 上で独自トークンが発行できる機能がリリースされる予定です。イーサリアムでERC20のトークンがたくさん発行されているようなイメージです。これによってカルダノブロックチェーン上でのICO案件が爆発的に増えると考えています。一般の仮想通貨ファンにとっても大きなトピックになるはずです。

三本:ICOが増えるということは、カルダノブロックチェーンを使ったDappsも増えていくということになります。Dappsが増えていけばエコシステムも充実していきます。

吉田:もう一点、先ほど説明したPoSのステーキングが2019年に始まります。つまり、ADAを保有している人がPoSに基づく作業の対価としてADAをもらえるようになります。PoSでもらえるADAの量は保有量と保有期間で決まります。ADAホルダーの方々にとっては楽しみな一年になるのではないでしょうか。

ーーありがとうございました。カルダノプロジェクトの今後に期待しています。

この記事の著者
久野太一
ライブドア、LINE、サイバーエージェントを経て福岡へ移住。福岡のベンチャー企業グッドラックスリーのブロックチェーン事業でICOのマーケティングとユーザーコミュニケーションを経験し現在フリー。
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