HOME ブロックチェーン技術 『IBM World Wire』は革命的な国際送金となるか?リップルとの違いとは

『IBM World Wire』は革命的な国際送金となるか?リップルとの違いとは

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ブロックチェーンに期待される分野のひとつが国際送金です。ブロックチェーンに注力しているIBMは国際送金にも参入しており、金融ネットワークシステム『IBM World Wore』の開発を進めています。

しかし、ブロックチェーンの国際送金といえばリップルが先行しているイメージがあります。World Wireとリップルはどのような差別化がされているのでしょうか。

また、既存の国際送金システムが抱えている課題とはどういったものかを解説します。

遅くて高い既存の国際送金システム

wallet

一般的な既存の国際送金システムのフローは手順が多く、一度の送金だけでも複数回に渡って手数料がかかります。

簡潔に手順を説明すると以下のようになります。

  1. 送金主が送金銀行へ送金依頼
  2. 送金主は送付する資金を送金銀行へ支払う
  3. 送金主は送金銀行へ送金手数料を支払う(支払い手数料両替手数料発生)
  4. 送金銀行から受取銀行へ送信の指図
  5. コルレス銀行(後述)を仲介して送金銀行から受取銀行へ送金
  6. 受取銀行に着金(受け取り手数料発生)
  7. 受取銀行から受取主の銀行口座へ入金

ひとつの特徴として、コルレス銀行という仲介が入ります。送金側の銀行が送金先の銀行口座を全て持つことは現実的ではないため、コルレス銀行という仲介を使うのです。

さらに、支払い手数料と両替手数料、受け取り手数料、合計3種類の手数料が発生することが一般的です。

手続きが多く手数料も高いため、現状の仕組みには課題があります。

ビットコインは国際送金手段になるか?

ビットコインは国際送金の手段となるか

このような国際送金の課題を解決するためにブロックチェーンが適していることは多くの人に理解されています。

では、世界でもっとも流通しているビットコインは国際送金の手段となるのでしょうか。

結論からいうと、ビットコインも国際送金の手段になり得ます。

ビットコインは非中央集権的なシステムで管理者が不在ですが、Proof of Work(PoW)のコンセンサスアルゴリズムによって低コストかつセキュアに送金することができます。既存の国際送金の課題をクリアしていると言えるでしょう。

51%攻撃の懸念

しかし、いくつか懸念点もあります。ビットコインは完全な非中央集権を目指していますが、それを支えるのがPoWです。PoWはビットコインユーザー同士でハッシュパワー(計算力)を競い合わせながらトランザクションを監視しあうことでセキュリティを担保しています。

この仕組みを逆手に取ると、巨大な計算力を持つ悪意のあるユーザーが51%攻撃を仕掛ける可能性が否定できません。

ビットコインのボラティリティの懸念

法定通貨に比べて、ビットコインのボラティリティは非常に高いです。もしも送金中に大きな値動きがあった場合、送り主と受け取り主のどちらかが損をしてしまう可能性があります。

手数料高騰の懸念

ビットコインの送金は手数料が動的に変化します。トランザクションが集中している時はより多くのハッシュパワーが必要になりますから、マイナーへの手数料がアップします。

既存の国際送金よりも手数料は安くなりますが、手数料変動のリスクを承知しておく必要があるのです。

 

このようにビットコインを利用した国際送金も優秀ではありますが、様々な懸念が存在していることは知っておいた方がいいでしょう。

IBM World Wireの仕組み

with ibm blockchain world wire tommorow

Stellar(ステラ)プロトコルを採用

IBMは数多くのブロックチェーン事業でStellarプロトコルを採用していますが、World WireでもStellarプロトコルを利用しています。

Stellarはデジダル通貨の国際送金を目的としたプロジェクトで、送り主から受け取り主にブリッジ通貨を介して送金することが可能になります。

ブリッジにはステーブルコインを採用

ビットコインでの国際送金と異なる点として、ブリッジ通貨にステーブルコインを採用している点があります。

ステーブルコインは価格が安定しているため、ビットコインでの送金のようにボラティリティの懸念が小さくなります。

パブリックとプライベートの中間的なネットワーク

ビットコインは完全なパブリックブロックチェーンで、誰でもネットワークに参加できます。そしてStellarも一般的にはパブリックブロックチェーンに属しています。

しかしWorld Wireではネットワーク参加は自由にできるが、一部の台帳管理者は限られたメンバーにだけアクセスできる方法をとっています。

パブリックとプライベートのいいとこ取りをしたのがWorld Wireというわけです。ただ、もちろん「一部の台帳管理者」が悪意のある攻撃をすればネットワークを阻害することも可能であることは変わりません。

複数のステーブルコインからブリッジ通貨を選択可能

World Wireのユニークな点として、ブリッジ通貨で利用するステーブルコインを複数の通貨の中から選べることが挙げられます。

リップルはブリッジ通貨に使えるのはXRPのみですが、World Wireは理論上XLM(Stellar)だけでなく、XRP、そしてBTCもブリッジ通貨に選択できます。

また、IBMとStellarは共同でステーブルコインを開発する計画も検討されていると報じられています。

ユーザーによって利用したい通貨が異なるはずですから、この点においては選択肢の多いWorld Wireに軍配が上がります。

 

これらの特徴によって、IBM World Wireは既存の国際送金システムをディスラプトしようとしています。これまでは数日かかったリードタイムをひとつのトランザクションで完結できるため、数秒から数分まで短縮できるのです。また、仲介業者も必要ないため、劇的な手数料の削減が可能になります。

2019年3月より本番運用開始

IBM World Woreは3月18日から限定的に本番運用を開始しています。IBMによると世界72カ国、47通貨、44の銀行で国際送金が可能とのこと。

ほぼリアルタイムでの資金移動が可能になるため、50年間の金融の歴史に新たな一歩を刻むインパクトを生み出せるかもしれません。

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この記事の著者
久野太一
ライブドア、LINE、サイバーエージェントを経て福岡へ移住。福岡のベンチャー企業グッドラックスリーのブロックチェーン事業でICOのマーケティングとユーザーコミュニケーションを経験し現在フリー。
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